【BeU後編】大学生発達障害者当事者コミュニティBeUに集うメンバーがBeUで成し遂げたいこと。

By 安室 朝常

2018.03.05  

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前編(リンクはこちら)に引き続き、今回の取材では、BeUのメンバーの皆さんにそれぞれのBeUの活動に対するお話をお伺いしました。

大学生発達障害者当事者コミュニティBeUは、「誰もが個性を最大限発揮できる世の中へ」をビジョンに掲げ、団体内においてもそれぞれが目的意識を持ち、個性的な方々が活動されています。

代表の名田さんが一歩踏み出した先に、その想いがどのように実現しているのか。今回は、BeUという「組織」を視点に取り上げたいと思います。

磯貝 絢人(いそがい けんと)*↑写真の右端
早稲田大学教育学部6年生。

元マジマガ編集者(芦名佑介氏の取材ラテラルシンキングのコラムを担当)や前田塾参加を経験。マジマガの活動にてBeU代表の名田氏と出会い、自身も抱える発達障害への理解を深めるためにBeUへの参画を決意する。BeUではWebマーケティングを担当。

林 利遥 (はやし としみち)*↑写真の左端より3番目
慶応義塾大学法学部。

自身も当事者として発達障害の刑事司法に問題意識を持つ。ミスターサークルコンテスト2017に出場。BeUでは勉強会や保護者会などのイベント企画を担当。

小林 暉(こばやし めぐる )*↑写真の中央
法政大学経営学部5年

教育分野に関心を持ち、高校生のキャリア教育に携わる。次世代の起業家・イノベーターを育成するMAKERS UNIVERSITY2期生BeUではイベントの企画など多くの運営業務を担当する。

当事者として活動への参画を決意する


—みなさんの自己紹介とBeUの活動に参加された経緯を教えてください。

磯貝さん:早稲田大学教育学部の6年生で、2019年卒です。webマーケティングを担当しています。高校生のメンバーと協力して、僕がFacebook、彼がTwitterと分担していて、当事者会や勉強会の集客や活動の報告をしています。

BeUに参加する以前から自身にADHDの疑いがありました。医療機関で検査を受けてADHDという診断はされなかったのですが、一般的な人よりもかなり傾向が強いということが判明しました。なかなか自分のモチベーションがあがらず、他の人が普通にできることでも自分にはできないという悩みが常にあって、それをどう解決したらいいか分からずに漠然としていました。

そんなときにマジマガのイベントがきっかけで名田くんと知り合い、ADHDについて話し合いました。そこからしばらく期間は空きますが、BeUの活動に誘ってもらいました。「当事者だからこそ自分の特性を理解したいし、こんな僕でも他の人に還元できるものがあるのではないか」と思い、BeUの活動への参加を決意しました。

林さん:僕は慶応義塾大学の法学部法律学科に在籍しています。以前に飲食系のアルバイトや営業のインターンで、上手くできなかった経験があります。営業のインターンであれば瞬時に言葉が理解できなかったり、上手くにトークしてのせていくことが苦手でした。飲食系のアルバイトではホテルの宴会場のようなところでアルバイトをしていたのですが、周りの人の動きにところにうまく合わせることができませんでしたね。

元々、高校時代からコミュニケーションが苦手でしたが、やっぱり今の内から自己理解をはっきりさせたいということで診断を受けました。その結果、自分がASDだということが分かり、そこからそういう人たちの可能性について考えるようになりました。

自分が当事者であることを踏まえて、自分の経験をお話ししたりする活動をしているうちに名田さんや小林さんとの繋がりができ、BeUの活動に加えていただいきました。発達障害の可能性を拓くということことで僕のやりたいことにすごくマッチしていて、また当事者であるということを踏まえて活動していくことができると思い、BeUに加入しました。

小林さん:法政大学の経営学部に所属していて今休学2年目中です。BeUでは当事者会や勉強会のテーマの設定などイベントの企画を担当しています。大学2年目くらいの頃から高校生のキャリアの教育の活動をしています。例えば、高校に行って授業を考えたり、ワークショップを作って高校生にやったりとか、そういう活動をしています。あとは大学生の教育に関わりたい人のコミュニティ作りとかフリーペーパーの作成をやっていました。

昔からすごく人と話すのが苦手で、小学生時代は親や先生から「恥ずかしがり屋だね」とよく言われていました。中学生時代では周りから浮いてしまって、中学1年生の時にはクラスに友達は1人もいない、話せる人は誰もいなかったという状態になってしまって、それがすごくつらかったという記憶があります。その時期は周りからも認めてもらえず、自分で自分を否定してしまっている状態で1年間くらいを過ごしていました。自分に自信が持てないというのがそこから繋がっています。将来何をしたいのか以前に、まず満足に生きられるのか、そこに悩む時期がありました。しかし、そこから大学に入っていろんな方との出会いがありまして、自分の中で問題意識を抱いてた教育の活動を始めるようになりました。

自分が発達障害だと気付いたのは去年の冬くらい、ちょうど1年前くらいですね。その頃、大学を休学してインターンをしていたのですが、仕事のプレッシャーで潰れそうになりました。当時は、何でこんなに指示が分からないんだろうとか、仕事の要領悪いんだろうと周囲からを指摘され、自分自身でも分からずに悩んでいました。その経験から自分が発達障害なのではないかと気づきました。診断は受けていないのですがASD(自閉症スペクトラム症候群)のグレーゾーンだと思っています。

また、教育についての活動をしていて、子供たち特に中高生に対して何かしてあげたい、また発達障害を持った中高生に対して何かやってあげたいという思い、自分で活動していてあまり上手くは行かなかったこともあり、名田くんの立ち上げたBeUと一緒に活動してみたいと思い、合流しました。

 

BeUの活動を通して、自分自身も成長したい


—BeUではこれからどのようなことをされていきたいですか。

磯貝さん:自分のことをより理解していきたいと思っています。名田くんを参考にしていますね。彼は自分がどのような人間かという説明がとても的確です。それに比べて、僕はまだ自分への理解が深まっていないので、そこを深めていきたいです。またそれと同時に他人に信頼される人間を目指していきます。先ほど、同じような境遇の人達に還元したいという話をしました。“還元する”ということはこちらからの一方通行で与えるだけでなく、「この人に助けて欲しい」と思われることが必要です。なのでBeUの活動を通じて、相手と信頼関係を築いていけるような人間になりたいです。

林さん:僕自身とくに発達障害を自覚する前から、刑事司法に興味がありました。とくに社会の仕組みや政治にすごく興味があります。法律家になりたいと考えていて、発達障害と法律・社会の問題の解決に取り組みたいと思います。障害特性として犯罪を犯してしまうような人も世の中にはいます。しかし、障害特性そのものが原因ではなく、働き口や家庭などの受け皿が十分にないために生活的な問題で社会の底辺に落ちてしまい、犯罪に行き着いてしまう人もいます。実際に刑務所に入っている人たちで知的発達系の人がすごく多いと言われてます。僕はそれらの問題に興味があって、将来はそれらの解決に力を注ぎたいと思っています。

小林さん:多くの人が前に進むためのきっかけを届けられる人になりたいと思っています。キャリア教育の活動をしてきて、中高生が前に進む瞬間って自分のやりたいことを見つけたりとか、すごくエネルギーに満ち溢れているんですよね。もちろんやりたいことがそのままかなうわけではないですが、その前に進んでいる瞬間のワクワクやエネルギーが、僕にはすごく魅力的に感じます。僕自身がそういう人たちと一緒にいたいし、できればサポートしたい、そう思っています。発達障害を持つ人も同じですね。色々なことにチャレンジできるようになって、つらいことも楽しいことも含めてワクワクする人生を歩んでくれたらいいんだろうなと思っています。
もう一つあるのが、自分自身がそういう生き方を実践することですね。
今までの僕はどうにも「こうしないといけない」とか「もっとやらないといけない」とか思いがちだったんですが、最近は自分が楽しくやることが一番大事だと思うようになりました。自分自身がやりたいことをやって、強みを活かして色々な人とともに生きていくことができればいいなあって思っています。

—みなさんにとってBeUとはどのような存在でしょうか?

磯貝さん:難しいですね(笑)。みんな違いますよ。全然。BeUのメンバーの多くは当事者です。発達障害というのは、そもそも個性が強い人が多く、一括りにできないくらい色の強い人が多いかなと思っています。普通の組織よりも、悪く言うとまとまりがないし、良く言うと個々の色がハッキリしている。まとまりがないというのは、ビジョンの方向性が違うとかではなくて“個性が豊か”ということです。色に例えると虹色のような組織だと思っています。

林さん:発達障害はグレーゾーンというアイデンティティ、何かしら自分は違うなという自覚を持っている人達が多くいます。発達障害の当事者が集うBeUはそれぞれがそれぞれの考えというのを持っていて、個性に対して寛容だと思いますね。

小林さん:わりと居心地の良い場所ですね。昔自分がリーダーで団体をやっていた時は、自分主体で団体とかやっていても、どうしても固くなってしまうのですがBeUではそんなことはありません。それぞれが目指しているものがすごく近いというのは大きいと思いますが、それ以上に何でもいい、人それぞれ思っていることも違っていいと、意識的に多様性を保とうせずとも多様性があるイメージがあります。

 

特性を個性にしていくために周りのサポートが不可欠


—最後にマジマガに目を通してくれた人たちに向けたメッセージをお願いします。

磯貝さん:二つ伝えたいことがあります。 一つ目は、“特性を個性にするか障害にするかは、周りが決めること”だということです。誰でも忘れ物をするし、ケアレスミスの1つや2つしますよね。だからそういう特性は少なからず皆が持ち合わせているものであると思います。 特性を個性にしていくには周りのサポートが不可欠です。それぞれが得意なこと、苦手なことを持っているので、補っていこうと思う人たちが増えてくれたらお互いにハッピーな社会になると思います。

二つ目は、何事も挑戦することが大事だということです。 何事もやってみないと、自分が得意なのか苦手なのか分かりません。僕たちは挑戦ということを大事にしています。僕と同じように「自分は他の人よりもできないことが多い」と思っている人もいると思います。でも、得意なことが見つかるかもしれない。やってみなければわからないんです。もし何かやりたいことがあるのであれば、周りの人と助け合いながら、「まずはやってみる」ことが大事なのではないでしょうか。

林さん:他人と違う自分を否定しないという考えが僕たちBeUの中にはあります。他人と違うことで自分自身のパーソナリティは消えてしまうことはありません。違って当たり前。僕たちと同じような立場、もしかしたらそうかもっていう人はたくさんいると思います。そういう人達に伝えたいことが、「診断されることで自分のことを言語化できている人が多い」ということです。言語化を通じて、自己理解が深まり、自分でもなぜかわからない悩みが少しは解消されるんですよね。

小林さん:発達障害に限らずとも苦手なことはみんなが持っているものですよね。だからもし自分が発達障害かもって思ったとしても、自分が発達障害であるということを恥じないでほしいです。自分の弱みを分かっているというのは1つの武器だと思います。これができないと言えることは、逆に言えば改善すべき点が分かってることでもあり、それは社会に出る時に役立つことです。「コンプレックスを強みに変える」、これは発達障害者に関係なく全ての人に言える大事なことではないでしょうか。だから悩みの解決手段を知るということはきっと人をサポートできる力になると思いますよ。

名田さん:発達障害はよく凸凹と言われますが、それはつまり凹もあれば凸もあるということだと思います。大事なのは自分に何が出来そうかを考えること。多分何かあるけど見つけられてない。これは発達障害者に限らず、多くの人に共通していることではないでしょうか。

一人一人の個性が発揮できるようになって、発達障害の〇〇さんじゃなくて例えば忘れ物が多いけどダンスが得意な〇〇さんみたいに、発達障害というフィルターを通すのではなく個人個人を見れたら良いですね。

 

編集者後記


BeUのメンバーの皆さんはそれぞれに「目標」があり、その実現のためにBeUでの活動を選択されていました。それぞれが一つの組織の中で「誰もが個性を最大限発揮できる世の中へ」の実現のために支え合いながらも、同時にそれぞれが「自分の目標」を達成するために高め合う関係であることが伝わっていきました。それぞれの話に対して、相槌や質問が飛び交うような、いきいきとした団体でとても楽しい取材でした。
名田さんが行動に一歩踏み出した先に、またたくさんの人の踏み出した一歩が重なり、一つの「組織」となる。そして、またそれぞれのこれからに向けて一歩踏み出すために前を向くことができる。皆さんも、学生生活、引いてはこの先の長い人生を楽しむために、まず一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。