【BeU前編】一人一人が個性を発揮していける社会を実現したい。BeU代表 名田憲史氏の語る「個性」とは

By 安室 朝常

2018.02.20  

0

皆さんは自分にしかない「個性」について考えてみたことはありますか?
発達障害ADHDの当事者として、「周囲とは何かが違う」という葛藤から大学生発達障害当事者コミュニティBeUの創立に至った名田 憲史さんにお話をお伺いしました。

 

名田 憲史(なだ かずふみ)
明治大学4年。
BeU代表。

大学受験期をきっかけに「周囲と何かが違う自分」に違和感を覚える。
その後の数々のアルバイト経験を通じて、
発達障害を抱えていることを知る。
浪人と休学1年ずつ経験し、大学生活4年目の
2017年2月に大学生発達障害当事者コミュニティBeUを設立。

自分を知ることで次への一歩が進める


ーBeUはどのような活動をされている団体なのでしょうか。

BeUは、「(発達障害の)特性が個性になる機会と環境を作る」をミッションとして、2017年の2月から活動しています。色々と試行錯誤してきましたが、昨年は主な活動として3つやっていました。まず発達障害のある大学生の当事者会。当事者会では発達障害のある大学生が日々の出来事や悩みを共有したり、就活など大学生ならではの話をしています。次に発達障害についての勉強会。勉強会のテーマは毎回バラバラです。こちらは様々な立場の方にお越し頂いていて、発達障害の当事者に限らず、例えば発達障害のあるお子さんをお持ちのお父さんやお母さん、療育の現場で働かれている方、障害のある方の就労支援をされている方、議員さん、弁護士、ベンチャーキャピタルで働いている方が参加されています。当事者会・勉強会はそれぞれこれまでに延200人くらいの人が来てくれました。そして啓発活動。啓発活動では発達障害についての理解を深めてもらうことを目的として、発達障害の当事者学生が自身の経験をお話しするものです。発達障害は概念だけ聞いてもあんまりイメージ付きづらいだろうなと思っているので、当事者の経験をお話しすることでより日常に近い形で発達障害について知ってもらおうと考えています。具体的には授業や講演という形式でやらせて頂いていて、これまでに複数の大学で20回くらいお話しさせてもらいました。

—BeU立ち上げの経緯についてお聞かせください。

大学3年生の終わり頃に自分がADHD(注意欠如多動性障害)という特性を持っていることに気付いたことがそもそものきっかけです。まず、ADHDという自分の特性に気づいた経緯として、その根本には大学受験での失敗があります。もともと高校2年の終わり頃まで、学校で受けさせられる模試では全科目だいたい偏差値30台でした。一度偏差値28を叩き出したこともあるので、相当勉強できませんでしたね(笑)。高校3年になる手前くらいに「このままだと自分の人生終わるんじゃないか」みたいな漠然とした不安に苛まれて、そこから猛勉強したんです。毎日12時間以上勉強した甲斐あってか、全国模試の結果で名前が載るくらいには成績を上げました。ですが志望校の判定も大凡の模試では合格範囲内だったにも関わらず、いざ本番となると結果は振るわず落ちまくったんですよね。沢山勉強したのに結果が出なかったことが悔しくて仕方なかったので、浪人を決意し再チャレンジすることにしました。浪人中も周りの友達に「武士」と言われるくらいには勉強していたのですが、1年経っても結局自分が満足行く結果は出せませんでした。

自分って何か変だなと違和感を感じ始めたのはその頃です。大学に入学してからはダンスサークルに所属する傍で、自分のことを知りたくて心理学関連の書籍や論文を読み漁りました。そうして、発達障害という概念に出会ったんです。ADHDの特徴を見た瞬間に「あ、絶対僕これだ」と思いました。それが大学2年生の時。また、アルバイトなどで中々仕事ができなくて困ったこともあり、自分がADHDであることには確信に近い考えを持っていました。特に飲食店のアルバイトが本当に出来なくて、段取りが悪く手際も良いとは言えませんでした。接客をやってもオーダーミスばっかりだし、レジ打ちをやればお金が”蒸発する”始末。首になったことはありませんでしたが、どこに行っても仕事が出来ないことが一因で人間関係はあんまり良くなく、全然長続きしませんでしたね。飲食店のアルバイトって、特にチェーン店は誰でも出来るようにマニュアル化されていますよね。それが出来ない自分は本当に無能なんだろうなって思ってました。バイトも出来ない、受験でも結果を出せない。どこに行ってもダメダメなんだって思いつつも、プライドだけは一丁前で自分の恥ずかしい姿は周りには見せたくないという感情があり、誰にも相談はできませんでした。そんなこんなで自分という存在がぽっかり社会から浮いているような感じがして、あの時は本当に辛かったです。でも、これといったタイミングもなく、当時は発達障害の診断を受けようとは思わなかったんですよね。

大きな分岐点となったのは、大学3年の終わり頃です。就活の自己分析の一環みたいな感じで、親に「僕はADHDかもしれない」という話をしたんです。そこで初めて知ったんですが、実は小学生の時にADHDの傾向がかなり高いということは診断されていたそうです。「ああ、やっぱりか」という感じでしたが、それを聞いて少し安心しましたね。これまでどうしても出来なかったことの理由が明らかになったような気がしたので。当時はまだ診断基準が曖昧であったこともあり、僕のことを診てくれたお医者さんと親との話し合いで、僕が将来的に困ったらもう一度来てくださいという話になったそうです。僕はかなり環境には適応出来ていたので、特に何もないと思ったとのことでした。僕は昔からかなり周りの目を気にするタイプの子供だったので、親の対応にとても感謝しています。

それから改めて病院に行き、診断の結果、はっきり自分がADHDだと分かりました。自分の特性を自覚してから、同じような傾向がある他の人たちがどのようなことを考え、どのような生活を送っているのか興味を抱き始めました。例えば、世の中には「発達障害当事者会」というものがあります。そこに参加すれば発達障害のある人たちに会えるんですよね。そこで色々話を聞かせていただきましたが、ネガティブなお話が多い印象を受けました。ネガティブな話そのものは決して否定されるものではありません。それ自体は鬱や統合失調症などの二次障害を防ぐためには必要なことだとは思います。だけど、そこから次に何をするかという行動ベースの話が一切成されていなくて、当時の自分はそこに問題意識を持ちました。これでは何も変わらないのではないかと感じました。そこで自分に何かできることはないかなと考え始め、BeUを立ち上げに踏み出しました。BeUでの活動を踏まえた今では、ネガティブな話ばかりということに関して、少し考えが変わり、前向きな話をすべきかどうかは、その当事者の状態に寄ると思っています。

 

特性は障害にも個性にもなりうる。だからこそ強みを作りたい。


—団体の立ち上げから約1年近く経ちますが、この期間で何か変化したものはありますか?

根本的な部分・出発点は変わりません。ただ、イベントの開催等を通じて沢山の人と関わっていく中で考え方が変わってきた部分はあります。

元々の出発点として、僕は発達障害の特性を持っている人が経済的な価値を生み出す強みを作れると良いなと思っていまし、それは今も思っています。自分の中の得意分野で生活ができること良いことですよね。発達障害のある人、例えばADHDを持つ人は興味のあることに過剰に集中する”過集中”があり、ASD(自閉症スペクトラム)を持つ人なら特有の拘りがあるので、何かしらの領域で突き抜けやすいことがあります。だから、以前はBeUでは「強み」を作るということにばかりにフォーカスしていました。だけど、今は必ずしも強みを作る必要はないんじゃないかとも思っています。正確に言えば、一人一人にステップがあると思うようになりました。そもそも強み云々より、まず何とか生きていてくれさえすれば良いという人もいれば、少し休憩が必要な人もいますしね。

また団体のターゲットも変わりました。以前は高校生も含めた青年期の発達障害当事者を対象に考えていたのですが、今は大学生をターゲットとしています。それに最近は大学生でも特に「何かアクションを起こしたいんだけども、中々一歩踏み出すことが難しい大学生当事者」をメインターゲットとすることにしました。高校生と大学生では全然ライフスタイルも違うし、大学生の中でもさっき言ったように個々で状況が全然違いますから。

去年の2月から、ひたすらイベントを開催し、そこでヒアリングを重ね、まずは大学生に絞りました。大学生にした理由は色々ありますが、一つには大学生の発達障害支援が相対的に薄いということと、あとは単純に自分が大学生だから状況が理解しやすいというのもありました。このように考え始めたのが去年の7月の話です。次に大学生の中でもさらに絞ったのは今年に入ってからです。忙しくバタバタ動いてはいましたが、スピード感は大分無いですね。思い返すと途中思考停止状態で盲目的にイベントをやっていた時期もあったので、これは大いに反省しなければなりません。だから、BeUとしてはこれからが本番といった感じです。今後の活動内容について興味ある人は、そのうち団体のTwitterFacebookでお伝えすると思うので良かったら見てください。

しかし、そうですねー、こうして振り返ってみると結構色々と変わりましたね!

—BeUをこれからどういう団体にしていきたいとお考えでしょうか?

僕たちはBeUをグレーゾーンを含む発達障害のある大学生が、将来を考えるにあたって利用できるプラットフォームに出来ればと考えています。きっと日本の大学生の多くに言えることですが、大学時代は人生のモラトリアムって言われるくらい時間的な自由が効くので、じっくり自分の将来について考えるにはとても良い時期だと思うんです。でも、発達障害のある大学生は自己肯定感の低さや不安感などが原因で、自力で一歩前に踏み出すのが結構難しい状況にある人が多い。だから、僕たちはそういう人たちを応援できる存在であれればと考えています。

自分は何が出来て、何が苦手か。自分は何がしたくて、どう生きたいか。それを知るためには、きっとどれだけ目の前のことに向き合えるか、挑戦できるかが大事だと思うんです。別にその挑戦は派手なものでなくていい思います。少しずつ自分の前にある壁を乗り越えていくことが必要なんじゃないかなと思いますね。それと、挑戦すれば絶対に失敗はあるので、その都度立ち直っていかなきゃいけません。失敗したら何で上手くいかなかったのかを考えるようにすると、思考と行動を反復していく中で、本当の自分が見えてくるのではないかと思います。ただ、こういうのってすごい大変ですよね。きっと一人では折れてしまうこともあります。だから、それを支え合えるような仲間が絶対に必要なのではないでしょうか。助け合いです。BeUに来れば、互いの存在を尊重し、それぞれの挑戦を支え合える仲間に出逢える。そんな場所を作れれば良いなぁと思います。

 

仲間と一生懸命になって、新しいことをしたい


—BeUでの経験を得て、名田さん自身はこれからどういうことをしていきたいのかを教えてください。

こういう活動をしていると、仲間と一生懸命になって新しいことをすることって、すごく楽しいな実感します。もちろん一緒にいる時間が長ければ、当然イラっとする時もありますけど、それでもふとした拍子に「みんなと一緒に活動出来て幸せだなぁ」と思える瞬間があるんです。こうしてBeUを立ち上げて活動出来ているのは、一重に周りの人の支えがあるからです。僕結構テキトーだから、例えば「やりたくねー」って思って放っておいたタスクとかも、仲間がいつの間にか処理してくれていたりします(笑)。お前それはダメだろってツッコミが入りそうな話ですけど、こういう小さなことからも皆に支えられているような気がして頑張れるんですよね。だから、僕は仕事を通じて、周りの人と一緒に走り抜けられるような人生が送れたら最高なんじゃないかなと今はざっくりと思ってます。もっともっと出来ることの幅を広げて、沢山の人の力になれたら僕の人生としては上々なのではないでしょうか。

具体的に何をやるのかということについては、まだそこまで深くは考えてないです。僕は割と色んなことに興味があるので、その都度自分の心が向く方に走っていくと思います。今はBeUの活動を頑張っていきたいと思っていますが、それでも去年1年間動いていてまた色々と課題が見えてきました。例えば、ダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれて久しいですが、僕も多様性というのはすごい大事だと思うんです。組織として小さい単位で見ても、バックグラウンドが多様な人が集まっていると話をしていて本当に楽しい。そんな考え方もあるんだって気づきが多いんですよね。それは発達障害の当事者の人たちと話していてもよく感じることなんです。ですが、今のままではダイバーシティ&インクルージョンの実現は難しいと思っていて、当事者やその周りの人の生活をサポートするテクノロジーが必要だと僕は考えています。なのでBeUの活動が少し落ち着いたら、ダイバーシティ&インクルージョンとテクノロジーを絡めて、何か始めたいですね。未来のことなんで分かりませんが(笑)。

—最後に読者へメッセージをお願いします。

さっきも少しお話したんですが、僕は挑戦することが大事だと思ってます。自分が実現したいこと、クリアしたいこと、興味あること、好きなこと、日々生きていれば自分の心はやりたいことを訴えかけて来ているのではないかと思うんです。どんなことでもいいから、出来そうなことからまず一歩踏み出すこと。楽には出来ないけど、ちょっと頑張れば出来るかもくらいのことが丁度良いと思います。たまには折れることもあるでしょう。どんなに頑張っても無理だったら、それはそれで良いじゃないですか。今はその時じゃないんだって分かったんだし。そしたら、また他のことに挑戦すれば良いと思います。あと、何かアクションを起こせば、絶対失敗は付いて回ります。だから、最初から失敗する可能性も頭の片隅に置きつつ、目の前のことに一生懸命になれると良いのではないでしょうか。それでも失敗してやらかしたら、凹みますけどね(笑)。僕は何か失敗したら「よっしゃ経験値増えた」とか考えて、出来るだけ失敗した時の負の感情に流されすぎないようにして、何で上手くいかないのかを考えるように心掛けています。手を止めている間は、何も状況は変わらないですから。まぁ、偉そうに語っちゃってますけど、これは全部自分に対して言い聞かせている部分がすごい大きいです。

まだまだこれからですよ!一緒に頑張っていきましょう!あと、もし良かったら、発達障害について調べてみてください。決して人ごとではないですよ!

 

編集者後記


「挑戦には失敗が付いて回ること」を念頭に置きながらもまずは「挑戦すること」が自分を変える一歩になると名田さんはお話しされていました。挑戦することで必ず何かが変化し、また同時に自分を知ることに繋がるということが名田さんのお話から伝わりました。
名田さん自身も自分に自信を持てない時期があったと仰っていましたが取材中の名田さんはとても前向きで一つ一つのお話を楽しそうにされていました。それは、きっと今を充実させることができているからだと思います。その秘訣を知るために、次回【後編】では、名田さんの踏み出した先にあるBeUという団体のメンバーの皆さんに迫りました。(後編のリンクはこちらから