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駄菓子の定番「○○○」に学ぶ。飾り物ではない、真の『ビジョン』の見極め方

By MAVERICK

2016.03.28  

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本気は至るところに落ちている。大学4年生のかなです。

就職活動などで、「理念やビジョン」を企業選定の軸にしている人も多いのではないだろうか。

しかし、理念やビジョンが飾り物になっている企業や、その捕らえ方を勘違いしている企業も多い。

今回は駄菓子の定番である「梅ジャム」の誕生秘話を通して、ビジョンのあり方を探っていく。

生きるためになんでもしていた。

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日本人なら誰もが一度は、駄菓子屋で目にしたことがあるのではないかと思われる「梅ジャム」。

これがどう作られているかご存知だろうか。

実は梅ジャムは日本中で流通しているもの全て、荒川区の工場で1人の84歳のおじいちゃんによって作られている。

作っているのは高林博文さん84歳。下町の工場で半世紀以上も作り続けている。

14歳で終戦を迎えた高林さんは、家を助けるため、生きるために何でもしていた。

イワシを露天で売っていたこともあり、そのときには木箱を蹴られ、革靴で額を割られ、怪我をしながら帰宅したこともあったそうだ。

それでも、生きるために必死に仕事を探し働いていた中で、父の知人から譲り受けたりんごの粉末を菓子にしたところ、思いのほか好評だったことがあり、そのアイデアから誕生したのが梅ジャムだった。

梅ジャムとともに生活、そしてともに飛躍

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作り始めた頃は充填機を使っても袋詰めは手作業だった。

1日で6000個、頑張っても7000個弱しか作れなかった、とのことだが、それでも1分に5個袋詰めしたとしても20時間以上働いている計算だ。

そのため、毎日朝から晩まで働き、梅ジャムを作り続けた。

思いのほか子ども達にヒットした梅ジャムは、40年前に自動充填機を購入したことで生産性が飛躍的に上昇。

ワゴン車が壊れるくらいに梅ジャムを積み、問屋を回って販売した。

最大で年間3000万円の売り上げとなり、梅ジャムで家も改築した。

時代と共に変化する。その中で変わらないもの。

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梅ジャムの味は時代とともに少しずつ変化しているのだそうだ。

例えば、原料となる梅肉。

社会全体で「塩分ひかえめ」の傾向が強まってので、梅肉は昔より塩味が薄れている。

また、安全性の問題から人工甘味料への反対意識が高まった時代もあった。

時代の流れとともに添加が全面禁止された甘味料もあり、高林氏は消費者の反発を考えて思い切って使用を止め、あえて「全糖」と表記するように。

現在でもこの文字が大きく載っている。

その中で変わらないのが価格だ。

昭和40年代に5円から10円に値上げしたが、それ以降は10円のまま販売し続けている。

梅ジャムの命は自分の命とともに。

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高林氏は84歳。梅ジャムづくりの後継者はいない。

「私は国民学校の出身ですが、戦時中は勤労奉仕があり、小学校6年までしか勉強していません。

そんな私でも梅ジャムを世に広めて、地域社会にも貢献してきました。

ですから、息子たちが中学生のころに、『そんな父以下にはなるな。自分で道を切り開け』と言ったのです。

そのため、フル稼動の時代でも、子どもたちに手伝いを頼みませんでした。」

梅ジャムのファンからは「やめないでほしい」「続けてくれ」などの手紙が今でも届く。

高林氏も当面、梅ジャムづくりを止めるつもりは無いという。

ともに人生を歩んできた梅ジャムとは高林氏にとって何なのだろうか。

「つくって売ることで家族が生活できてきたわけですから、『命』だろうと思います。梅ジャムはこれからもつくり続けますよ。」

真のビジョンは、死ぬまで達成できない

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価格も安い。後継者もいない。

やるもやらないも、どこまでやるのかも、自分次第。

しかし、高林氏は梅ジャムと出会い、一人で最後までやり遂げることを決意している。

周りから見たら、「なぜやるのか?」と疑問を持たれてもおかしくない。

しかしそれでも高林氏は最後までやり遂げるに違いない。

これが、理念やビジョンというものではないだろうか。

売上、サービスの利用者数、認知度など、もちろん企業が行う活動はビジネスであるから、そういったものも目標としては必要だ。

しかし、最終的な理念やビジョンは、きっと自分が死ぬまで達成できたのかどうかはわからないものだ。

その過程は周囲から見れば「なぜやるのか?」「何の意味があるんだ?」と言われるようなものであるかもしれない。

だが、やるのだ。

どんな仕事も、やることは変わらない。

実際にやることは袋詰めだったり、人と話すことだったり、単調で地道なことばかりだ。

ただそこに「その人にとっての意味」が存在するかどうかで、捉え方が変わり、仕事の質が変わってくる。

その思いの強さだけが、すばらしい仕事を突き詰めていけるかどうかのポイントである。

結局のところ、あらゆる人生に意味は無い。

「その人にとっての意味」だけが重要なのだ。

企業の理念やビジョンを、自分にとっての意味に置き換えられるか?

就職活動中の皆さんには、そんなことを考えてみてもらいたい。